新聞社に入り、支局に配属されたばかりの新人記者の多くは“カメラ小僧”になる。自分が撮影した写真が新聞紙面を飾るという感動を味わうからだ。現在のデジカメと違って、フィルム時代だった私の若いころは、火事現場でカメラにフィルムを入れずに撮影し、支局に上がって現像をしようとする時に気づいて真っ青になったり、焼き付けがうまくできず暗室の中にこもりっきりになったりと悪戦苦闘の連続。それでも、発表の場をもっているということの魅力は大きく、職業柄もあって、いつでもカメラをもち歩き、被写体探しをしていた。
そんな“カメラ小僧”にとってお見合い相手は若い女性だけに絶好の被写体だ。お見合いの当日は無理としても2回目以降のデートではお願いして写真を撮らせてもらった。最初は戸惑う女性でも、こちらが「きれいですね」「いい表情ですよ」と声をかけながら撮影していると、モデルになったような気分になるのか、自然な笑顔をファンダーの中で見せてくれるようになった。
ある時、お見合いした神戸のOLはごく普通の女性だった。しかし、2回目のデートでカメラを向けていると、極めて狭いアングルだが、本人の左前の位置で若いころの樋口可南子さんそっくりの絶世の美人に見えるポジションがあることに気づいた。
私は感動してシャッターを押し続けた。デート後に早速、近くの写真店にプリントに出し、出来上がるのを楽しみに待っていると、その前に女性から仲人を通じてお断りの連絡が入った。
仕上がった写真は私が期待した通りの出来で、美女がニッコリ笑っていた。自分だけのものにするのはもったいので、本人に送ってあげると、礼状が来た。それには「きれいに撮影していただいてありがとうございます。とてもうれしいです。早速、次のお見合い写真に使わせていただきます」と書かれており、私はかなり複雑な気分になった。
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