お見合いでは、色んな悩みや事情を抱えている女性も多かった。こちらも“身から出たサビ”とは言え、順調ではない人生の中で辛酸をなめてきただけに、お互いの苦労話をするうちに、心の琴線に触れ、見合いの場ということも忘れて涙が出てくることもあった。
ある女性は過去の出来事がトラウマになってリストカットを繰り返していた。「結婚する相手には全てを知ってほしいから」と見合い当日に、いくつもの傷跡のある手首を見せられた時、私は正直言って、少し引いた。
ある中学教師は「私は仕事と家族の介護があって、全く結婚する気はないのですが、あなたが新聞記者と聞いて、クラスの子供たちに新聞記者のお仕事を教えたいので、聞きに来ました」と語った。私は心の中で「こっちは真剣に結婚を考えてお見合いに来ているのに、不真面目だ」とムッとしたが、話を聞いているうちに仕事と家族を思う気持ちが伝わってきてジーンときた。
家族に自殺者をもつ女性は「今日、初めて自然な気持ちで家族の自殺の話ができました。聞いてくれてありがとうございました」と頭を下げた。
いずれの女性とも数回のデートだけの縁に終わったが、今でもたまに、彼女たちのことをぼんやりと「幸せになっただろうか」と思い出すことがある。
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