外見が良くないというコンプレックスがあり、それが明確な事実であるため、見合い相手の女性に自分をどうやって気に入ってもらえるかは一貫して重要な課題だった。
お笑いタレントがもてることにあやかって、一生懸命ジョークを言おうとしたが、“落ち”の前でカンでしまい、しらけることが多かった。見合いで沈黙になるのが怖かった。このため、無口な女性の前では饒舌(じょうぜつ)になったが、結果は大抵、逆効果だった。
前日の仕事で疲れていた土曜日、仲人さんから前もって「言葉数の少ない静かな方です」と紹介されていた女性とお見合いした。私は疲れのため、以前のような饒舌にはなれなかった。小声でぽつぽつと話す女性に合わせて、こちらも小声でぽつぽつ話した。彼女が言いよどんで沈黙になっても、こちらから話さず、彼女の言葉を待った。
「今日は疲れていて、女性を楽しませるだけの精神的な余裕がない。断られても仕方がない」と覚悟したが、見合いの後半は彼女は笑顔を見せ、胸襟(きょうきん)を開いて積極的に話をするようになり、私に好意をもってくれた。おとなしい人だと聞いていただけに、びっくりした。
この経験は貴重だった。見知らぬ男女の初対面の場であるお見合いでは、男性も緊張するが、それ以上に緊張する女性も多い。男性の方が大抵、体が大きいから、それだけでも女性は男性に威圧感や警戒感をもってしまう。この単純な事実に気づき、これ以降は相手の気持ちに添うことを最優先にした。
単に聞き上手になるだけでなく、私が話す時も相手の話し方に合わせた。ゆっくり小声で話す相手には、こちらもゆっくりと小声で、元気に早口で語る女性には私も同じ感じで話した。相手の関心事を尊重して、相手が1つのテーマで話を始めたら、こちらがテーマを変えることはせず、相手が変えるまで同じテーマで話を続けた。
もちろん、これによってモテモテになったわけでは決してないが、初対面の緊張感を取り除くことには役立った。これは取材の際に応用しても効果的だった。相手に気に入ってもらおうと考えるなら、「相手の気持ちに添う」こと。ぜひお試しください。

コメント