お見合いの場合、あまり結論を先延ばし過ぎてはいけない。5、6回のデートをすれば、一応の結論を出すべきだし、お互いに気に入ったのなら、男性の方から「結婚を前提にお付き合いをしたい」と切り出すのが筋だろう。しかし、正式なプロポーズは2人とも結婚への気持ちが固まった段階でいいと思う。私にはお互いの気持ちが結婚まで高まっていないにもかかわらず、あせってプロポーズをしてしまい、失敗した苦い思い出がある。
20代の終わりのころ、大阪のOLとお見合いをした。頭がよく、快活で感じのいいお嬢さんだった。5回目のデートの後、双方の親を交えての会食もした。それでも、2人とも話が結婚や将来に関することに及びそうになると、恥ずかしくなって避けていた。
6回目のデートを終えた後、仲人さんからは「相手のお嬢さんを気に入ったのであれば、結婚をお決めになれば」とアドバイスされた。私はどうしたらいいかと迷ってしまった。相手の女性は好感がもてるタイプだが、自分とフィーリングが合っている感じはあまりしない。しかし、お断りをするのも惜しい。もう少しデートを重ねて、相手との相性を見極めたいというのは本音だったが、これ以上、結論を引き延ばすのは相手の女性にも仲人さんにも失礼になるかもしれない…。
そんな迷った気分の中で7回目のデートをした。レストランでの食事が一段落した時、私は「結婚しましょうか」と切り出した。彼女はびっくりした顔をして「すぐにはお答えできません。お時間をいただけませんか」と語った。私はその答えを聞いて、「彼女も私と同じように結婚について結論を急いでいなかったのだ」と安心した一方で、「7回もデートしているのに、彼女は結婚について何も考えてこなかったのか」と自分も結婚について結論を出していなかったことを棚に上げて、彼女の怠慢さにややあきれた。
私はデートのたび、彼女からのプロポーズの返事を待ったが、8回目のデートでも9回目のデートでも、彼女からこの話題が出ず、10回目のデートで、私はやっとの思いで「結婚についてどう考えていますか」と切り出すと、彼女は「まだ考え中なんです」と苦笑いしながら答えた。私としては辛抱強く、彼女の返事を待つつもりだったが、11回目のデートでも12回目のデートでも彼女から返事はなかった。
私が彼女にプロポーズをしてから約2カ月が過ぎていた。私がプロポーズをした以上、彼女の返事次第で私のこれからの人生が大きく左右される。プロポーズした方としては彼女の返事に抗いようがない。まるでまな板の上のコイのような心境になってきた。
彼女がどういう結論を出すのか、イライラした気分で待っているうちに、私の中で彼女への好意は消えた。反対に私のイライラした気分に気を配ってくれない彼女の無神経さに対する不満が募ってきた。
12回目のデートの後、私は仲人さんに「プロポーズの返事をここまで待たせるのはおかしいと思います。申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」と連絡を入れた。その日のうちに、彼女から電話があり、「仲人さんからお断りの連絡があり、びっくりしました」と能天気に話し出したから、私はむっとした。「当然でしょう。プロポーズして2カ月も経つのに、お返事をいただけないのですから」と話して電話を切った。
数日経って、仲人さんから電話はあった。「彼女はあの時の電話でプロポーズを受ける返事をするつもりだったのよ。彼女は『一方的に断られたので、返事を切り出せませんでした。先方があれほど怒っておられるとは気づきませんでしたが、プロポーズを2カ月も待たせた私が悪かったと思います。私はもう結婚する自信がありません』と泣いていました」と教えてくれた。しかし、私は改めてお付き合いをする気にはなれなかった。
今、振り返って考えてみると、これだけ2人の思いがすれ違ったわけだから、彼女と私の相性はあまり良くなく、結婚に至らなかったという結論は正しいと思う。しかし、私としては反省点が多い。彼女がお嬢さん育ちで、男性と付き合う経験が少なく、男性の心の動きがわからなかったのだろう。そんな中で結婚という大決心をするためには相当の時間が必要だったのだろう。それに配慮しながら彼女と付き合うことができなかった私は未熟だった。今の私なら、いろんな工夫をしながら、2人の間で恋人ムードを作り上げ、彼女の気持ちを盛り上げてからプロポーズしたと思う。
私はいつも、デートでは彼女に笑顔で接したわけだから、彼女は私がイライラしながらプロポーズの返事を待っているとは思わなかったのだろう。彼女としては、私が鷹揚(おうよう)に返事を待ってくれていると信じていただけに、私の突然のお断りと電話での一方的な話しぶりは驚きだったのだろう。この出来事が彼女にトラウマになって、その後の結婚の障害になったのではと心配になり、もう少しやさしい言葉で彼女に接することができたのではないかと反省する思いに今も襲われる。
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