お見合いに抵抗感のある独身者は、職業として行っている仲人さんや結婚情報サービス会社のような「結婚のプロ」と“近所の世話好きおばさん”を一緒のように思っているのではないかと私は思うことがある。
つまり、プロの仲人さんにお見合いを頼んだり、結婚情報サービス会社に入会した場合でも、“世話好きおばさん”にお見合いをお願いした時と同じように、釣書を見て会いたくないと思った相手についても「会わないとわからないから」と無理やり会わされたり、1回のお見合いでお断りしたいと思っても「一度会っただけではわからない。もう一度会いなさい」と説得されたりと色々干渉されるのでないかという心配だ。お見合いを敬遠している独身者がそんな心配をしているケースがあるからだ。
プロの仲人さんや結婚情報サービス会社の担当者なら、当事者の考えを無視するような強引なことはまずしない。反対に、こうした「結婚のプロ」たちの場合はお見合い相手を紹介してくれるだけのサービスが多く、有効なアドバイスをもらえる機会が少なくて物足りなさを感じることもあった。
“世話好きおばさん”でも干渉がましい人は本当は少ないと思うが、私は典型的な“世話好きおばさん”に振り回されたことがあった。私が中年と言われる年代に入り始めたころ、私の実家の近くのおばさんが私の結婚について真剣に心配してくれるようになり、相手を紹介してくれるようになった。
ある時、おばさんが「この子はいい子だから必ず結婚しなさい」と言って釣書と写真をもってきた。その釣書で紹介された女性は私より10歳以上も若い短大を出たばかりのOLだった。「相手から見れば、私は完全なおじさんですよ。結婚の対象とは見てくれないと思います」と私は躊躇(ちゅうちょ)したが、おばさんは「大丈夫。この子は私が子供のころから世話をしてきたから、私の言うことは何でも聞きます」と自信満々だった。
お見合いをしたものの、なかなか話がかみあわず、苦労した。彼女も乗り気ではないようだった。お見合いの後、私はおばさんに「年が離れすぎて話が合いませんでした。相手もそう感じていると思います。お断りしたいと思いますが…」と電話した。おばさんは「彼女からもお断りの連絡が来ましたが、『一度会っただけではわからないから、もう一度会いなさい』と説得しました。こんないい子を逃したら、二度といい縁談はありませんよ。あなたは年上なのだからしっかりとリードしなさい」と私を説教し、私はもう一度、会う羽目になった。
かと言って、話が合わない者同士が何回、会っても結論が変わることはない。2回目のデートの後、おばさんから電話がかかってきた。「彼女から『どうしても合わないから』と言ってきたけど、『真面目な男性だからあなたにぴったりなの。あなたが若すぎてわからないだけ』と諭しておきました。本人同士だけでは縁談が進みそうにないから、お互いの親を交えて会いましょう。私も同席します。相手の親に好感をもたれるようにしなさい。『将を射んと欲すれば、まず馬を射よ』ですよ」と強い口調で言われ、私の負担で高級レストランで親を含めて会うことになった。
レストランに行く前に、おばさんから電話があり、「正座をして、相手のお父さんに『お嬢さんとお付き合いをさせてください』ときちんと言うのよ」と言われた。素直な性格の私はその通りにしてしまったものの、「相手の女性は乗り気でないのが明らかなのに、その親になぜそこまで言わないといけないのか」とさすがに嫌気がさした。
この後、私はおばさんに「絶対に無理だと思います」ときっぱりとお断りの返事をしたが、おばさんは「向こうからもお断りの連絡が来たのよ。お互いにとってもったいないわね」と残念そうだった。
私は「“ありがた迷惑”以外の何物でもない」と不満に思い、これ以降、おばさんにお見合いをお願いすることはなかった。しかし、年をとって人の情けのありがたさがわかるにつれ、独身の私を心配してくれたおばさんの思いそのものはとてもうれしく思うようになった。
最近の独身者の急増について、有識者の間では「近隣付き合いの希薄化で近くで結婚を世話してくれる人が少なくなったことが原因の1つ」と指摘する声もある。つまり、“世話好きおばさん”の減少だ。私のようなケースは極端で、ほとんどの“世話好きおばさん”は若い人たちの思いを尊重しながらお見合い話を進めてきたことだろう。結婚願望がありながら年を重ねる独身者たちを心配する人が周囲にいなくなった現状を考えると、私はこれまでに結婚に果たしてきた“世話好きおばさん”の役割を見直したい思いにもなっている。
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