このコラムを書き始めてから、独身者だけでなく、若い妻帯者からも相談を持ち込まれるようになった。その相談内容はこれから結婚をしようとする独身者にも参考になると思うので、このコラムに書かせていただこうと思う。一番多い相談内容は「妻とよくけんかをしてしまうんです。夫婦げんかをやめる良い方法はありませんか」といった類だ。
私はこう答えることにしている。「夫婦げんかになったら、けんかの原因が何であろうと、奥さんに『怒らせてごめん』と謝ったうえ、『言いたいことを全部言ってほしい。全て聞くから。何時間でも付き合うから』と言ってあげてください」。
このアドバイスに対し、相談をもちかけた若い夫たちは必ず、青い顔をして「私が悪くもないのに、なんで謝罪する必要があるのですか。そんなことを言うと、妻は図に乗って、ずっと怒り続けますよ。私は非難されっぱなしになります。夫婦の力関係が圧倒的に不利になるに決まっています」と言い出す。
このあたりから、私は笑いがこみあげてくる。「あなたのけんか相手は誰ですか。悪質なクレーマーですか。あなたを愛している奥さんでしょ。夫婦げんかは先に謝った方が勝ちです。そのうえで、あなたがじっくり話を聞く姿勢を示せば、奥さんはあなたの誠意をわかってくれると思います」と答えると、彼らの大半は「それは甘いです。うちのカミサンの怖さを知らないから言えるんですよ」と言うから、面白い。
夫婦げんかを解決する重要なポイントは論理で勝とうとしないことだ。夫婦げんかで論理を競い合ったところで、言い負かされたと感じた方が感情的になって気まずい雰囲気が強まるだけだ。特に、若い夫婦のけんかでは、夫は妻の感情を鎮めることに全力を挙げるべきだ。そのためにはまず謝ったうえで、ひたすら聞くこと。途中で反論したら、その言葉で相手の怒りが再燃する可能性があるから、言い返さずに相槌(あいづち)を打ちながら誠実に聞き続けることが重要だ。
奥さんがしゃべり疲れ始めた頃合いを見計らって、「愛しているよ」と言えば、ほとんどの夫婦げんかは終息(しゅうそく)に向かう。若い妻たちはけんかの中で夫の愛を確かめようとしている傾向が強い。だから、愛を確認できれば、冷静になってくる。そうなると、自ずと妥協点が見えてくるものだ。
若い夫たちは「妻からボロクソに言われ、こちらも興奮しているけんかの最中に『愛している』なんて言えません」と言う。しかし、そこは工夫だと思う。夫婦の間なら、相手に腹が立って仕方がない局面でも言える愛の言葉はある。
例えば、「俺はおまえを愛している。おまえが俺を愛する1万倍のエネルギーで愛している。だから、この程度のささいなことでは腹が立たない」と宣言してしまうのだ。腹が立っているのなら、恩着せがましく憎たらしく言えばいい。若い妻たちは“売り言葉に買い言葉”で「冗談言わないで。私だって愛しているわよ」と言ってくれるかもしれないし、そう言わなくても夫の愛を確認できたから、怒りの感情は少しずつおさまってくるはずだ。
これらの戦術が効果を発揮するのは若い夫婦たちに限られる。結婚して長い時間が経って夫婦関係が固定化してくると、何を言っても効果が少なくなってくる。ただ、私は相互理解のために、夫婦げんかもたまにはやったらいいと思う。一番困るのは、お互いに口をきかなくなったり、無視し合う“冷戦状態”が長く続くことだ。“冷戦状態”が長引けば、お互いの心まで冷えてきて本当の夫婦の危機を迎える危険性がある。
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